| 投稿者名: 竹村直美
令和6年10月12日.13日、大阪歯科大学創立100周年記念館にて第35回日本スポーツ歯科医学会総会・学術大会及び認定医研修会が開催された。
私たちSHP.Dentかながわのメンバーも7人参加し、スポーツ歯科医学に対する新しい知識を得てきた。
私は朝6時台の新幹線に飛び乗り、9時半からの認定研修会に参加した。今回の講演は「研究倫理の基本」という基礎的なことと、「良質なマウスガードを提供するために」と題し、前日に行われたワークショップの結果報告であった。このワークショップは第1回が2014年に開催され、そこから10年たった今、マウスガードに関する考え方や製作方法などについて学会員たちのコンセンサスを得て、より良質なマウスガードを患者さんたちに提供しようというものである。会場は満員でサテライト会場も立ち見が出るほどであった。学会員たちの意識の高さが伺えた。
教育講演①は「スポーツ外傷等による脳脊髄液減少(漏出)症への適切な対応について」という演題であった。今まであまり聞いたことのない病気ではあったが、先日女優の方がこの病気を患い、公表したことから潜在的な患者が多くいるとのことであった。私たち歯科医がその病気を発見したり、治療したりするものではないが、それに近い症状を呈する患者さんに遭遇したときに、知識を持って専門医を紹介することは原因がわからず苦しんでいる患者さんにとって、有益なことであると思う。
その後開催されたDT・SDHジョイントセミナーは本来スポーツ歯科に関わる歯科技工士、歯科衛生士のための講演であるが今回「スポーツマウスガードの製作管理におけるコ・デンタルの連携」と題し、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士5人のモデレーターの先生がそれぞれの立場でお話ししてくださった。アスリートのマウスガード製作に対し、コ・デンタルがチームで臨み、お互いの情報共有、連携がいかに大切かが示された。また、実際に現場に足を運び、アスリートの現状やその競技の特性をつかみ、マウスガード製作に役立てる必要性も語られた。
初日の最後には社員総会が行われ、私たちSHP.Dentかながわの理事長 嶋村が座長として指名され、会を進行した。
その後、懇親会が場所を変え行われ、その後内輪の懇親会への移行し、大阪の夜を楽しんだ。
次の日も朝から講演、ポスター展示、企業展示を見て回った。
午後からの教育講演②では「アスリートの口元を支えるマウスピース」と題し、元ラグビーの日本代表の畠山健介氏による講演があった。ラグビーをあまり知らない私でもお名前くらいは知っている有名人だが、とても頭のよい方でお話も面白かった。マウスガードを作る側ではなく、装着する側の気持ち、事情を代弁してくださるとても貴重な講演だった。
畠山氏は小さい時からラグビーに勤しんでいたが、父親からラグビーをやる条件としてヘッドキャップとマウスガードは必ず着用することと言われていたそうである。(お父様、えらい!凄い!)そして日本代表として活躍している時、200キロからの巨漢の敵が突進してきたときも、自分を守ってくれたのはヘッドキャップとマウスガードだったと断言してくださった。そしてアスリートの引退した後の人生を健康で豊かに過ごすためにも貴重な役割を担うツールであると断言する。
ではなぜマウスガードが普及しないのか?マウスガードが社会でどれほど必要かを説いていかなければならないという。今の社会はコスパ、タイパがいかに良いか?が問われる。コスパ、タイパがよければ売れるし、みんなが手にする。そこを考えて「嗜好」から「必須」のものにしていくことが大切であると説く。行政からの働きかけのほかに、「アイディア」(マウスガードがいかに有効かを広げるための付加価値を付ける)「カンペイ」(逆転の発想)「連携」(ソフト→ハード→ムードの流れを作っていく)という考え方を取り入れ、良いものだから普及するとただ待っているのではなく、積極的に社会に働きかけなければならないという。私たちにとっては耳の痛いお話しで、とても勉強になった。