私たちのアンチドーピング活動

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2022北京冬季オリンピックも終盤になってきました。選手の皆さんの頑張りや悔しさに一緒に一喜一憂している私です。

前回のブログにも書かせていただいたように、このオリンピック(どのオリンピックもそうでしょうが)いろいろと問題が出てきています。最近大きな話題になっているのがROCの女子フィギュアスケート選手、ワリエワ選手のドーピング疑惑です。連日のようにニュース、ワイドショーで取り上げられているのでご存じの方も多いと思いますが、12月の別の大会の際に行われたドーピング検査で「トリメタジジン」という禁止薬物が検出されたというものです。

この問題にはいろいろな疑問点や考えなければならないことがあると思います。

まずROCというものが、14年ソチオリンピックで国がらみのドーピング問題が発覚したロシアが、ロシアという国でオリンピックに選手を出すことが許されず、ロシアオリンピック委員会から個人資格ということで出場している選手たちの集まりであること。そのような選手の中から、またもドーピング問題が発覚してしまったということです。

私個人の意見としては、今回のようなドーピングに関してはIOC、スポーツ仲裁裁判所は厳しい判断を下さなければならないと思います。前回のブログにも書きましたがスポーツにおけるルールとは選手の体や競技を守るためのものであり、ドーピング規則はその基本になるものだと考えます。ドーピング禁止薬物というのは摂取することにより身体機能を上げたり、精神を高揚させていくものです。それだけ聞くといいもののようですが、それを摂取している選手とほかの選手との間に不平等が生じますし、何より摂取し続けることで選手の身体に悪影響を及ぼすものです。そう考えると今回のように選手が未成年で身体が成長段階にある選手こそドーピングしてはいけないと思います。周りの大人たちが選手を育てるにあたり、より厳しくドーピングやその他のルール違反を犯さないように指導し、スポーツマンシップにのっとって競技をするように導いていかなければならないと思います。

私がメディカルスタッフとして参加させていただいた、2019近代5種国際大会の話です。落馬して腰に痛みを訴えていた選手に日本の医師が痛み止めの薬を渡しました。もちろんドーピング禁止薬ではない薬です。ですが選手は何度もドーピング禁止薬ではないか確認し、その薬のロットナンバーを控えていました。それは医師を信頼していないということではなく、選手は自分の身体に入る食べ物、飲み物、ましてや薬に関して責任を持たなくてはならないという考えを持っているからです。そして後から聞いた話ですがロットナンバーを控えるのは、その薬自体はドーピング禁止薬ではなくても製造ラインやその他の経緯で禁止薬が混入してしまった例があり、そのためロットナンバーを控え、あとから検証することができるようにしているそうです。国際大会に参加する選手はそこまで気を遣うのかと感心したものです。

2019年ワールドカップファイナル大会
救急車が待機しています

今回、ワリエラ選手は彼女のおじいさんとコップを共有して、意図せずに体内に禁止薬物が入ってしまったと弁明しています。事実関係はまだわかりませんが、それも選手としてはしては注意するべきことです。もしそのことが原因ならうっかりドーピングに入りますが、それも選手の責任です。15歳は未成年で保護対象と言われますが十分自分自身を守ることを考えられる年齢だと思います。

私たちSHP.Dentかながわのメンバーもサポートしている近代5種競技医科学委員会でも定期的に選手に対するアンチドーピング講習会を行い、新しい禁止薬物の情報やドーピング事例などを提供しています。

2019年 近代3種 立川大会
2019年近代3種 立川大会 医務室およびアンチドーピング啓蒙ブース

また、近代3種競技というのがあります。近代5種競技は馬術やフェンシングがあるので子供たちの参加が難しいのですが、3種では水泳、レーザーラン(走ることとレーザーピストルのシューティングを組み合わせたもの)の成績を競うものなので、子供達でも気軽に参加できます。(レーザーシューティングに夢中になる子供も多いです)その大会ではアンチドーピング啓蒙の一環としてブースを設け、クイズ形式でドーピングに関しての情報を提供したり、保護者の方にパンフレットを配布して未来のアスリートたちに自分自身を守ることの大切さを広めたりしています。

このような地道な活動が将来のアスリートたちを守ることになるように願っています。

2019.11月近代3種大会にて
アンチドーピングのアンケートとクイズに挑戦

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