| 投稿者名: 嶋村政博
平成27年10月25日、11月15日に、2日間かけて神奈川県立・横浜立野高校アメリカン・フットボール部にスポーツ・マウスガード(MG)を製作し、提供しました。
かながわスポーツ・健康づくり歯学協議会(SHP Dent.かながわ)では、どのようにプレーヤーの歯型を採ってMGを製作し、ご本人に提供しているかを参考にしていただければと思います。
◎ 平成27年10月25日(日曜日:第1日目)
SHP Dent.かながわの歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士がチーム編成し、プレーヤー19名とコーチ1名、合計20名のMG製作のために、神奈川県立・横浜立野高校アメリカン・フットボール部を訪問しました。
最初に、プレーヤーが現在どのようなMGを使用しているのか、見させていただきました。皆さん既成品を使われて、歯科医院製作のMGはありませんでした。写真のような既製品(下段数字:既製品の価格)を、お湯で軟化したり、白いゴム質のものを枠に流して自分の歯ならびに合わせて使っているようです。既製品の短所としては外れやすい、しゃべりにくい、違和感があってプレーに集中できないなどです。歯ならびや噛み合わせを考慮していない既製品MGでは、スポーツ外傷・外傷性顎関節症の予防効果が発揮できない場合もみられます。
次に、プレーヤーに今回MGを提供する趣旨を説明し、その後に歯科医師によるお口の診査を行いました。むし歯や治療中の歯があると、製作するMGがその治療によってお口に合わなくなってしまいます。
歯科衛生士の補助の下、歯科医師がプレーヤーの上・下顎の歯型を採りました。
歯型採りで気分の落ち着きがなくなるプレーヤーもみられましたが、無事に19名の歯型を採りました。歯型採りされている顔がおかしくて、周りではやしたてる先輩や同級生など、和気あいあいの雰囲気で行うことができました。
その後に、上下の歯の噛み合わせの記録を採ります。下の歯型を採らなかったり、それに加えて噛み合わせの記録も採らないで、MG製作する業者などがありますが、それでは良いMGを製作することは絶対にできません。歯科医師だけができる、この噛み合わせを正確に採ることが非常に重要で、最適なMGの善し悪しが決まると言っても過言ではありません。
歯科技工士が、採った歯型に石こうを注いでいきます。歯型から、個人個人の石こう模型を作っていきます。MG製作も歯科治療もチームプレーです。前回、東海大相模高校ラグビー部にMG製作・提供した普及活動は夏でしたので、石こうの固まりに苦労したそうですが、今回は大丈夫だったようです。
これで、第1日目は終了です。
ここからは、SHP Dent.かながわ会員の歯科技工士にMG製作を託します。はじめに、歯型から作った上顎の石こう模型を、噛み合わせの器械に付着します。その後、プレーヤーの噛み合わせを記録した、赤色のロウを介して下顎の石こう模型を器械に付着します。
上顎の石こう模型を、プレス機にセットします。今回は、厚さ4 mmのMGシート(チームカラー:イエローのシート)を加熱・軟化して、個人の石こう模型にプレス・圧接し、適合の良好なMGを製作します。
プレスしたシートを、MGの形にカットします。そして、噛み合わせの器械に戻します。プレーヤー個人個人の噛み合わせをMGに与えていきます。上顎の総入れ歯を作るのと同じ方法で、噛み合わせた時、下顎の全ての歯がMGに均等に接触するように調整します。
◎ 平成27年11月15日(日曜日:第2日目)
SHP Dent.かながわの歯科医師4名と歯科技工士3名で、高校に再度訪問しました。製作したMGを、プレーヤーのお口の中で適合チェックし、調整後に、提供しました。
MGは、適合と噛み合わせが重要です。スポーツ・競技するときだけに着けるものと、私達は全くそう思っていません。プレーヤーが、安全に快適にスポーツを楽しむために、取り組んでおります。
歯科技工士が上顎の模型にプレスし、噛み合わせの機械で調整したMGをプレーヤーのお口の中で合わせていきます。歯ぐきに強くあたるところはないか、気持ち悪くないかなどを調べます。続いて、厚さ40ミクロンの赤色の紙を使って、歯科技工士が模型上でMGに与えた噛み合わせと、実際のお口の中に入れたMGの噛み合わせが一致しているかを調べます。写真のケースでは赤いマークが、MGに与えた噛み合わせと見事に一致しているのが良くわかります。合っていない時は、歯科医師がMGを調整して、下顎の歯に均等に接触するように調整します。
プレーヤー全員の調整終了後には、MGの清掃・保管方法、定期的なMGのチェック・調整が必要なこと、さらにMGの交換時期などを説明しました。
◎ 平成27年12月10日(木曜日:第3日目)
プレーヤーへの提供後、約1か月が経過しましたので、MGのチェックに参りました。プレーヤー19名中、1名だけ長時間の着用によって違和感があるとのことで、SHP Dent.かながわ会員の診療室で調整することになりました。しかし、18名は全く問題がなく、装着感、噛み合わせなど、市販のものと「全然違う」と高い評価をいただきました。
前回の東海大学相模高校ラグビー部に引き続きまして、今回はプレーヤー全員がスポーツ店などで販売されている既成品を使用している神奈川県立・横浜立野高校アメリカン・フットボール部に対し、SHP Dent.かながわ の歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士がチームを編成し、製作したMGを提供しました。
お口にぴったりと適合するMGは、既製品と異なって、吐き気などの違和感が少なく、外れにくくて大きな声を出すことができます。顎関節症になる危険性もなく、安全で、「快適だ」とプレーヤーに高く評価していただきました。
SHP Dent.かながわでは、今後もこのような普及活動を通じ、「MGは歯科医院で製作したものを装着」するべきと啓発していきたいと考えます。